白いワンピースの思い出

白いワンピースの思い出

夏も盛りのある朝、白いワンピースに袖を通しました。

白地に、花柄のワンピース。
柔らかくて、ふわりとした生地。
夏の太陽も、緑の草原も似合うような爽やかさが、とても好きでした。

気に入ってたびたび着ていたにも関わらず、確か、今年着たのはそれが初めてだったと思います。

その白さにつられて、鏡に映った自分も心なしか清々しい。前よりも少し痩せた体のラインが、このワンピースにはちょうどいい具合。ニョキッと出た裸足がまた、夏らしい。

とてもいい気分。

そして同時に、少し切ない。

それは、この一年の療養生活のところどころに、このワンピースがあったからでした。特に、胸の奥に辛さを抱えているときに。

最後に楽しい気分で着たのは、新しくできた友人の家に遊びに行ったとき。そこでさらにたくさんの友達ができて、みんなすてきな人ばかりで、とても楽しかった。

それから2ヶ月も経たないころにがんだということが分かり、子宮・卵巣摘出の宣告を受けたのでした。そのとてつもない落胆と、開腹手術に対する恐怖の中、姉がディズニーシーに連れて行ってくれました。そのとき着ていたのもこのワンピースでした。

入院のために病院へ向かって行ったときも。

入院中に継続して抗がん剤を打つことになり、気持ちを落ち着かせるために先生が外出を勧めてくれたときも。

再度外出許可を取って、脱毛前に長い髪を短く切ったときも。

治療の節々に、このワンピースを着ていました。まるで、共に運命を辿ってきたようです。
入院以降はそれしか持っていなかったから、という理由で必然的にそれを着ることになったのですが、そもそも入院に着ていったのは、少しでも晴れやかな気分でいるため。ワンピースに着替えた、その時々の気持ちを思い出すと自分のことながら心が締め付けられます。

そしてまた、同じ白いワンピースを着て、こうして鏡の前に立っているのでした。

一連の治療が終わって、抜けた髪も伸びて、外では蝉が鳴いていて、すばらしく爽やか。

やはりあのときは病気だったのだろうと思います。自分の姿が、明らかに昨年とは違う。

それに、病気になる以前とも違う。

スタジオジブリの映画「魔女の宅急便」をご覧になったことはあるでしょうか。主人公・キキが物語に登場した時点と、最後にホウキ(モップ)に乗って飛んで行くシーンとでは、明らかに印象が違います。それと同様に、鏡に映る自分が以前と同じ顔かたちであるのに、全く違って見えるのでした。

魔女の宅急便を観たときは、そのエンディングロールを眺めながら、キキはこのあとどうなっていくのかな、としみじみ思ったものです。ひとつの物語が終わる寂しさを感じながら、その後の漠然とした予想を心に描いてみたり。

それは、心地よい切なさです。

きっと、キキにはこれからもっといろいろな出来事が起こり、それを越えて成長していくのでしょう。でもそれは、不安というより、希望に近いものです。
たとえ、どんなことが起こるにしても。

現実の世界ではひとつのストーリーの終わりが見えるわけではありません。けれど、そうやって人は成長し、人生は進んでいくのだと思います。

ふわりと揺れる白いワンピースを見ながら、そんな気がしたのでした。

(「救急隊、人助けもたいへん!」へ続く)

夏のコスモス
花、一輪
[療養中フォトギャラリー by iPhone (c)木口マリ]

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~ Comment ~

こんばんは

マリさん、こんばんはー
コメント間空いてしまった~ごめんねーm(__)m

なんかね~
読んでていろいろいろいろ思うんだけどー
こう、なんかうまく言葉にできなくってね・・・
書こう、書こうと思ってたのに~ごめんね
そんな中にでも 腸くんのことを書いてる記事が
けっこうお気に入りだったりしてますーσ(^◇^;)

マリさんの記事はとっても詩人のようだわ~
あたしもそんな風に書きたい~(*′艸`)

10月になったね~
ちょっと過ごしやすいけどー
なんだか、急に寒くなったりなんだりで~
体調崩さないように気をつけてね~

物にやどる記憶

マリさん、こんばんは。
白いワンピース、爽やかかつシンプルで
潔い感じ・・。ワタシのマリさんの印象かも。

私は入院中、友達とかに病人に見られたくなく、Tシャツにスエット的な格好で、『いつもと一緒』の自分を演じていました。
多分、同情されたくないと言う虚勢。。

やっぱり、気持ちが落ちてたんですよね。

でも、その時に携帯をバイブモードにしてて、電話ごしに話す時だけ、素直になったりして・・今でも夜にベッド近くのバイブの音が鳴ると一瞬、院内にいる気分になる時があります。
あの時は、本当に病院から出られるのかしらと大袈裟に考えていたので、携帯は外界との命綱。(今は出るのがめんどくさいぐらいなのに)

なんか、その時の事を考えると寂しいようなせつないような・・何が言いたいのか良く分かりませんが、マリさんの文章を読むと、状況が違うはずなのに、共感してるのです。

記憶が物や音、香りにやどって、
その時の自分に戻ることありますよね。

来年も、再来年も、そのワンピースを着ながら、(時々大変だった事と、良い先生との出会いを思いだしながら)健康に楽しく過ごせるといいですよね!

>kikako さん

kikakoさん、どーもー!
腸トーク、気に入っていただけてうれしいです(^^)

詩人だなんて〜〜〜(//▽//)/
これまたうれしいお言葉〜〜〜〜〜。

ほんと、涼しくなってきましたね。
とうとうセミの鳴き声も聞こえなくなりました。
暑くなってくるとウオーと燃えてくるのに、涼しくなると感傷的になるのはなぜでしょう…?
冬眠準備?

>あう さん

あうさん、こんにちはー!

私の印象、すごくイイですね。
好きになっちゃうかも…なんつって。
実物はどうでしょう。乞うご期待(-▽-)/

何かに耐えている時の行動って、落ち着いているようにしていても、やっぱりどこか違うものですね。いつもなら普通のことでも、ちょっとがんばってやちゃってるような。しかも、だいぶ経ってからそれに気付くという。で、自分で自分がかわいそうだったなあと思うような。

物や事はほんと、心とリンクしますね。
お年寄りのおうちに行くと物だらけなのは、リンクがどんどん増えていくからでしょうか。

ワンピース、ずっと着れるように大切に扱おう…(^^;

白いワンピース、情緒的ですね
私もふとした時に、過去を振り返って自分が着ていた服を鮮やかに思い出す時があります
出逢いだったり別れだったり、始まりだったり、はしゃいだ時に着ていた服
思い出すとその頃の自分が甦り、懐かしく思って切なくなることも
今はどんどん捨てちゃって跡形もないけど

白いワンピース、きっとマリさんの思いを全部知ってるんだろうね
マリさんに着てもらえて幸せなワンピースですよ(^^)
  • #367 ちっくたっくぼんぼん 
  • URL 
  • 2014.10/02 22:56 
  •  ▲EntryTop 

>ちっくたっくぼんぼん さん

思い出というのはなんでこう、切ないんでしょうね。

しかしここまで書いてしまうと、あのワンピースは捨てられる気がしない(^^;

姉と、お互い同じ服を着てまたディズニーシーに行こうと話していました。
で、前と同じところで写真撮るの。いろいろ変わってるのかな〜。

既に、好きです💓(笑)

マリさんの文章と写真センスに脱帽。
完全にファンですわ(^O^)。

うーん、年下の人で尊敬してるのって、
マリさんと主治医の先生だけかも・・

>あう さん

いや〜ん、照れます(//▽//)/
なんて……。

好きでいてくれて、ありがとうございます(^▽^)

主治医の先生、年下なんですね〜。
自分の年齢が上がっていくと、年下でも活躍している人がだんだん増えていきますよね。
高校のころの先生なんて、思えば今はもう、その時の先生の年齢をゆうに越しています。
(先生、ガキだったんじゃないか!)

おもしろいものですね。
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