腸閉塞は突然に<其の十八>(終) わたしにとって、ストーマ(人工肛門)とは
腸閉塞は突然に<其の十八>(終) わたしにとって、ストーマ(人工肛門)とは
(「腸閉塞は突然に<其の十七> 人工肛門、そしてお気に入りへ」の続き)
今回は、冗談に聞こえてマジメなお話です。
◇◇
わたしにとってストーマ(人工肛門)とは、旅先で巡り会って、それからしばらく一緒に旅を続けた友人のようなものでした。
ともに始めた旅は楽なものではなく、険しい山やごつごつした岩場の道。しかしその旅の間、たとえわたしがそっぽを向いていたとしても、ものも言わず、決して裏切ることもなく、ずっと私を支えてくれていたのでした。
◇◇
お別れが近付くことが、とても切なかった。
閉鎖術のための入院の前夜には、一緒に家で眠る最後と思い、パウチを交換すれば、これが最後のお世話と思い、手術室に入るときには「またね、体の中でね。ありがとうね」と言いつつ、ポンポンと叩いたのでした。
よく、戻せてよかったね、と言われますが、わたしとしてはうれしい話ではなかったのです。ストーマがあることを不都合に思うことは全くなくなっていたし、戻さない選択をするのもありだろうかと始終考えていました。
しかし、やはり腸。おなかが自分の居どころです。
もしも腸に考える力があるなら、おなかの中に戻りたいだろうと思いました。
それに、わたしのストーマは小腸と大腸のつなぎ目を切り、小腸の切り口を外に出していたため、大腸はおなかの中で眠ったままだったのです。
せっかく体を健康に生かすために生まれたのに、ずっとそこで待ったままでした。その大腸を動かしてあげるべきだと思いました。
その後、腸の接続は完了し、おなかには大きな手術の傷のほかに、ストーマを閉じた傷が残りました。それは日に日にきれいになってきています。けれど、完全には消えてほしくありません。そこにストーマがいたことを忘れたくないからです。ここにいたんだなあと思っていたいのです。
それでもやはり、腸はわたしのために生きて、活動しています。
おなかに戻ってしまった今はもう、ストーマの顔を見ることはできません。しかし、ひそかにわたしと旅を続けてくれている。そう、思うのでした。
……と、すごい擬人化ながら、ちょっとイイ感じで腸閉塞シリーズを締めようかと思っていました。
ところが、実はこのストーマ、今、目の前にあります。
また人工肛門になったのではありません。
ラブリーW先生からのストーマ閉鎖の術前説明では、ハラから外に出ている部分は汚染されているため、そのままハラに戻すことはできないとのお話でした。なので、切り取ってしまうとのこと。
そこで、ダメもとで、「切った部分をもらいたい」と言ってみました。
「とても大切なんです」と。
ヘンなやつ、と思われたことでしょう。
しかし、術直後、多分まだ手術台にいて、麻酔から目覚めたばかりで朦朧としているとき、先生はわたしに小さなボトルを差し出したのでした。
「ストーマ、取っておいたので、持って行ってください」とのこと。
この状態でどうやって持って行けというのだ、と思いつつ、気持ちを汲んでくれたのはうれしかったですね。後日見たら、きちんと病棟のベッドサイドに置いてありました。
ホルマリン漬けです。
ドクロマーク付いています。
どちらにしても、やはり切ないですが、これも出会いだったのだなあと思います。
すさまじいインパクトを与えられた出会いでした。これぞ、ディープ・インパクト。
とりあえず、腸閉塞シリーズとしてはこれで終わりですが、ストーマ関連トークはまだまだ豊富にあります。そのへんはまた後日。
一連の腸事件、
これは、たいした経験です。
(「腸閉塞は突然に<番外編> 崖から突き落とされたライオンの学び」に続く)

それをきれいと思うか、醜いと思うかは、その中に何を見ようとするかによると思います
[療養中フォトギャラリー by iPhone (c)木口マリ]
今回は、冗談に聞こえてマジメなお話です。
◇◇
わたしにとってストーマ(人工肛門)とは、旅先で巡り会って、それからしばらく一緒に旅を続けた友人のようなものでした。
ともに始めた旅は楽なものではなく、険しい山やごつごつした岩場の道。しかしその旅の間、たとえわたしがそっぽを向いていたとしても、ものも言わず、決して裏切ることもなく、ずっと私を支えてくれていたのでした。
◇◇
お別れが近付くことが、とても切なかった。
閉鎖術のための入院の前夜には、一緒に家で眠る最後と思い、パウチを交換すれば、これが最後のお世話と思い、手術室に入るときには「またね、体の中でね。ありがとうね」と言いつつ、ポンポンと叩いたのでした。
よく、戻せてよかったね、と言われますが、わたしとしてはうれしい話ではなかったのです。ストーマがあることを不都合に思うことは全くなくなっていたし、戻さない選択をするのもありだろうかと始終考えていました。
しかし、やはり腸。おなかが自分の居どころです。
もしも腸に考える力があるなら、おなかの中に戻りたいだろうと思いました。
それに、わたしのストーマは小腸と大腸のつなぎ目を切り、小腸の切り口を外に出していたため、大腸はおなかの中で眠ったままだったのです。
せっかく体を健康に生かすために生まれたのに、ずっとそこで待ったままでした。その大腸を動かしてあげるべきだと思いました。
その後、腸の接続は完了し、おなかには大きな手術の傷のほかに、ストーマを閉じた傷が残りました。それは日に日にきれいになってきています。けれど、完全には消えてほしくありません。そこにストーマがいたことを忘れたくないからです。ここにいたんだなあと思っていたいのです。
それでもやはり、腸はわたしのために生きて、活動しています。
おなかに戻ってしまった今はもう、ストーマの顔を見ることはできません。しかし、ひそかにわたしと旅を続けてくれている。そう、思うのでした。
……と、すごい擬人化ながら、ちょっとイイ感じで腸閉塞シリーズを締めようかと思っていました。
ところが、実はこのストーマ、今、目の前にあります。
また人工肛門になったのではありません。
ラブリーW先生からのストーマ閉鎖の術前説明では、ハラから外に出ている部分は汚染されているため、そのままハラに戻すことはできないとのお話でした。なので、切り取ってしまうとのこと。
そこで、ダメもとで、「切った部分をもらいたい」と言ってみました。
「とても大切なんです」と。
ヘンなやつ、と思われたことでしょう。
しかし、術直後、多分まだ手術台にいて、麻酔から目覚めたばかりで朦朧としているとき、先生はわたしに小さなボトルを差し出したのでした。
「ストーマ、取っておいたので、持って行ってください」とのこと。
この状態でどうやって持って行けというのだ、と思いつつ、気持ちを汲んでくれたのはうれしかったですね。後日見たら、きちんと病棟のベッドサイドに置いてありました。
ホルマリン漬けです。
ドクロマーク付いています。
どちらにしても、やはり切ないですが、これも出会いだったのだなあと思います。
すさまじいインパクトを与えられた出会いでした。これぞ、ディープ・インパクト。
とりあえず、腸閉塞シリーズとしてはこれで終わりですが、ストーマ関連トークはまだまだ豊富にあります。そのへんはまた後日。
一連の腸事件、
これは、たいした経験です。
(「腸閉塞は突然に<番外編> 崖から突き落とされたライオンの学び」に続く)

それをきれいと思うか、醜いと思うかは、その中に何を見ようとするかによると思います
[療養中フォトギャラリー by iPhone (c)木口マリ]

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~ Comment ~
>あう さん
楽しんでいただけてうれしいです〜。
ずっとブログは書いてきたはずなのに、なぜか腸閉塞シリーズを終えるのはわたしも寂しく感じるんですよね。親近感湧いちゃったかも。
ホルマリン・ストーマ、いつも見えるところに置いてあります。
化粧品・アクセサリー・ストーマ・ぬいぐるみ・シーサー……という並びです。自然に見えるのか、遊びに来た人に気付かれたことはありません(-▽-)
ずっとブログは書いてきたはずなのに、なぜか腸閉塞シリーズを終えるのはわたしも寂しく感じるんですよね。親近感湧いちゃったかも。
ホルマリン・ストーマ、いつも見えるところに置いてあります。
化粧品・アクセサリー・ストーマ・ぬいぐるみ・シーサー……という並びです。自然に見えるのか、遊びに来た人に気付かれたことはありません(-▽-)
- #356 木口マリ
- URL
- 2014.09/28 09:00
- ▲EntryTop
NoTitle
マリさん
おひさしぶりです!こんにちはー。
腸閉塞シリーズ、一気に続きを読みました。
とってもポジティブに、コミカルに記事にされていて
かつ、解りやすい(^-^)v
時々じんわりウルウルでした。
きっと、色んな感情があったと思いますが、マリさんがこうして
明るく書かれているのを読んで、同じようなオストメイトの方は
元気づけられるでしょうね♪
お腹に納められた腸もきっと、マリさんと同様に少し淋しいと
思っている?かも。ふふふ。
すてきなお話、ありがとう!
おひさしぶりです!こんにちはー。
腸閉塞シリーズ、一気に続きを読みました。
とってもポジティブに、コミカルに記事にされていて
かつ、解りやすい(^-^)v
時々じんわりウルウルでした。
きっと、色んな感情があったと思いますが、マリさんがこうして
明るく書かれているのを読んで、同じようなオストメイトの方は
元気づけられるでしょうね♪
お腹に納められた腸もきっと、マリさんと同様に少し淋しいと
思っている?かも。ふふふ。
すてきなお話、ありがとう!
- #357 ゆるり
- URL
- 2014.09/28 14:49
- ▲EntryTop
>ゆるり さん
どもどもー、こんにちは!
一見、悲惨に思えるものでも、それを完全に覆す場合が往々にしてあるのだと知りました。
意識はいろいろに向けていかないとですね〜。見えないものがたくさんです。
帰って行ったヤツもさびしく思ってくれているでしょうか。
そうだとちょっとうれしいです(^^)
一見、悲惨に思えるものでも、それを完全に覆す場合が往々にしてあるのだと知りました。
意識はいろいろに向けていかないとですね〜。見えないものがたくさんです。
帰って行ったヤツもさびしく思ってくれているでしょうか。
そうだとちょっとうれしいです(^^)
- #358 木口マリ
- URL
- 2014.09/29 11:34
- ▲EntryTop
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自分の身に置き換えて考えると、果たしてそんな風にポジティブに思えるかは疑問ですが、とにかく、腸に対して親近感がわきました。
でもホルマリン浸けの子は、
夜はちょっと怖い気もしますが・・(笑)
マリさんの、その変な感性も興味深い!
この腸閉塞シリーズが終わるのが寂しいです。読むのが待ち遠しいぐらいでした。
ちなみに、私のもっともお気に入りは、初めてお腹を見るくだりの『みちゃおっかなぁ~』の看護婦さんアピールのとこです✌
思わず、クスッとしてしまいました。
マリさんの次のシリーズにも期待してます!