社会的弱者になる

社会的弱者になる

抗がん剤の副作用で疲労し、動くのもままならずに壁に寄りかかったまま、部屋の一辺と窓から望む空しか目に入らないとき、「今、また大きな災害が起こったら自分はどうなるだろう」と考えました。

健康なときでさえ、とっさの異常事態に対処することは精神的にギリギリのはず。避難所での暮らしもなんとか耐えられる程度だろうに、そこにプラスしてこの弱りきった体を引きずっていなければならないなんて。

体が思うように動かず、なんでも食べられるわけでもなく、ちょっとした気温や気圧の変化だけでひどく気分が悪くなるような状態。
おそらく死ぬことはないでしょうが、健康なときに比べて段違いに苦しい思いをすることは容易に想像できます。それがとても恐ろしい。

そんなとき、「わたしは今、社会的弱者なのだ」と気付きました。
そして、災害は今までより、より身近なものになりました。

可能な限り、そんな自分の身でも守れる準備をしておく必要があります。
と言っても、一般的な準備プラスアルファです。

・お風呂の水を捨てずにおく
・流しの下にペットボトルの水をズラリと設置
・食べられないときのための、流動食やカロリーメイトのような食べ物を常備
・いつでも持ち出せるように飲み薬、膀胱のカテーテルと消毒薬、ストーマ(人工肛門)用の装具を準備
・「体の状態メモ」を用意(病院、診察券の患者ID、主治医、使用装具の寸法やメーカーなどを記入)

そのほか、冬であればあのコートを持っていけば寒さをしのげるな、とか、避難場所のどこにトイレや公衆電話があるな、など、脳内避難訓練もしておきます。
ちなみに、「体の状態メモ」は災害時だけでなく、体調が急に悪くなったときにも有効です。
救急車で運ばれたとき、救急隊員さんや医師にこれまでの経緯の説明を「ウ〜ン、ウ〜ン」とうなる合間にしたものです。これはかなり大変。退院後に即、このメモを作り、おサイフなど数カ所にしのばせていました。
それだけで、ちょっと安心。

また、なにか役立つ情報はないかとインターネットを検索したところ、そこには病人や障害者のための、災害時の対処法が数多く載せられていました。こんなにあっさり見つかるとは。それだけ多くの患者や障害者が不安に思っているのですね。

特に膀胱に障害が残っていたときや、ストーマ(人工肛門)があったときなどは災害時への不安はさらに大きなものでした。
清潔が必須で、トイレではそれなりのスペースや一般の人よりも長い利用時間が要求され、使用頻度も高い。手持ちの医療器具が汚染したり壊れてしまったら新たに入手できるかも分からない。健康なときに比べ、感染症にかかる確率も格段に高くなっています。今ではだいぶ健康体に戻ってきていますが、それでもまだ先日接続した腸の調子は安定しません。

病人や障害者は、身の安全があるだけでは全くもって不十分なのだと思いました。

病気になったことがない人には、そんなことは分かるはずもありません。
ましてや、ストーマなどの内部障害は見た目でそれと分かりません。どんなものかを知っている人の方が少ない。

病気になってみて、そして一時期でも障害者になってみて思ったことは、想像すらできない世界がまだまだたくさんあるということです。見て分からなくても、人知れず大変な思いをしている社会的弱者が大勢います。その人たちは、健康な人が苦労する場面であれば、その何倍も辛いはず。そういったときに苦労を分け合えることができる社会が理想的ですが、それにはまず、ひとりひとりが辺りを見回すことが大切ではないかと思います。
日常でもそういったことのできる、心の大きな人になりたいものです。


<患者・オストメイト(人工肛門・膀胱保有者)のための災害マニュアルサイト>

◆「命を守る知識と技術の情報館/がん患者編」(このほか、慢性病編、こども編など)兵庫県立大学大学院看護学研究科
◆「自然災害発生後のがん対処法」MDアンダーソンがんセンター
◆「災害時にがん患者がパニックに陥らないための7箇条」がんサポート
◆「オストメイトの災害対策」日本オストミー協会
◆「ストーマ(人工肛門)について」(「chapter11:災害に備えて」にストーマ用メモがあります)がん研有明病院
◆「災害に遭遇した時、人工肛門(ストーマ)の管理をどのように行いますか?」兵庫県立大学大学院看護学研究科

また、ストーマ装具の自作方法がこちらにありました。
災害・緊急時 ストーマパウチの作り方」有限会社イーストタウン

オストメイトマーク
オストメイト(人工肛門・人工膀胱保有者)のマーク
駅のトイレなどでもよく見かけます 今度、注意して見てみてください
ずっとそこにあるのに、気がつかないことは多いものです
[療養中フォトギャラリー by iPhone (c)木口マリ]
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~ Comment ~

ストーマーのマーク、初めて見ました
使用されている方はトイレなどでこのマークを探すんですね
しっかり覚えておきます
災害など、日頃の備えは健常者以上にしておくのは賢明です
私はごく普通の備えしかしていないけれど、考えてみたらそれはとても怖いこと
自分を守るのは自分しかいないと言う感覚を大事にしなきゃいけないね
人は私の事を知らないんだから伝えなきゃ!

またまたマリさんに教えてもらいました
ありがとう(^^)/


  • #187 ちっくたっくぼんぼん 
  • URL 
  • 2014.08/01 23:11 
  •  ▲EntryTop 

NoTitle

私も、たまに入るテレビ番組の震災関連の番組を見ながら
「今、災害起きたら逃げ遅れるな」と思っていました。
だけどマリさんのような危機管理全くしてなかったっす。
おくすり手帳に、簡単な既往歴は書いて持ち歩いてるけど・・・
非常食に水と食品を常備してる程度。
勉強になりましたー。

セルフカテーテル時代に、ストーママークのトイレを
使わせてもらっていました。おどおどしつつ。
洗浄できるし便利だったので。でも、街中では少ないですね。

>ちっくたっくぼんぼん さん

手を差し伸べてくれる心優しい人はいると思いますが、自分でなんとかできるぶんの用意があるとちょっと安心ですよね(^^)

オストメイトマークは多機能トイレに付いていることが多いですよ〜。
新しい駅やモールにも高い確率で付いていますね。
東京メトロには全駅に付ける計画だそうです。世界でもそこまでやっているところは無いだろうと思います。
日本はすごいな〜、なんて。
でもなぜか、障害者に対するイメージがよろしくないという問題があります(--)

>ゆるり さん

なんだか、今の人間社会がギリギリな気がするんですよね〜。
ちょっとのことで破綻するような。
そこまで行ったら病人にとしてはどうしようもないのですが、そこまで行くかもわからないし、とりあえずなんかやっとくか、という感じです(^^)
でもほんと、具合が悪い時に災害なんか起こったらたまらないですね。大震災の時もそういう人がいたんでしょうね。うう〜、切ない。

ゆるりさん、マーク知ってたんですね〜。さすが〜(~~)
外出先ではストーマの処理よりも、導尿の方が大変でした。
多機能トイレ使って正解だと思います!

NoTitle

私が子宮がんの手術をしたのは2011年2月14日でした。
退院後、3月31日から始まる化学療法を控え、炬燵でゴロゴロとしていた頃
あの、東日本大震災がありました。
今までで一番大きなイベント(私には出産よりも)を体験したばかりだったので
被災地で同じような手術をされた方を案じていました。

そして、災害時に備える物の中に導尿グッズも加わりました。
というより、あの頃はまだ自力では一滴も出すことができない状態だったので、
それがなかったら、尿毒症になってしまいます。
貴重品やお水よりも、一番なくてはならない大事な物となっていました。
そんなことも、この病気を経験してわかったことです。

あの大震災をきっかけに、私もいろいろ考えさせられました。
でも本当は、経験に頼ることではなく、
健康な方たちも一緒に考えることのできる社会であってほしいですね。

>サザン さん

サザンさんの手術は震災のころだったんですね(><)
お家とはいえ、それは怖かったですね。

術後すぐで、最も無防備で弱っている状態の時に震災に遭われた方は、ホント、辛かったでしょうね。
私も手術のたびに、災害がおきませんように、と祈ったものです。

ある程度の医療の基礎知識や病気、障害に関する理解というのは、学校の必須科目に入れてもいいんじゃないかというくらい重要なことだと思います。そこから道徳にもつながっていくような気がします。

みっこ

遅コメ失礼します。
ストーマを造設した時、退院してまずは非常持ち出し袋にストーマケアのグッズを追加しました。
日常では健常者に近いくらい普通の生活を送れますが、
それは環境が整っている前提でのお話で、
災害時など非常時には普通の人以上の苦労は容易に想像できます。
オストメイトはやはり障害者なのだと気づきます。
リンクどれも役に立つ情報ばかりです。教えてくださってありがとうございます。
オストメイトマーク知りませんでした。
内部障害は見た目分かりませんから、バリアフリートイレを出て舌打ちされることもあるので、
こういうことも大切だと思います。

>みっこ さん

そうなんですよね。
日常はホント、普通の人と変わりないんですよね。
運動もできたし、お風呂屋さんも普通に入って、プールや海でビキニも着ちゃいました(^▽^)/

障害者=少数派なんですよね。
人間が全員オストメイトだったら、そこまで恐ろしく思うこともないのかなと思ったりして。
でもなんにしても少数派はいるわけで、自分で準備できることはしても、協力していかないといかんなあと自分に戒めております。

オストメイトのタグ、若い女性オストメイトの会の「ブーケ」から送られてきました。
ピンクでカワイイですよね(^^)
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