人間になりたい類人猿

人間になりたい類人猿

入院13日目

管がすべて抜けたら人間になれるかと思いきや、そう簡単にはいかず。さらに試練は続きます。人間への道のりは長いのです。

そのころはというと、「人間になりたい類人猿」。おなかの傷がつっぱって、超・猫背状態なのです。
その突っ張り具合は、おなかにでっかい強力粘着テープ(業務用)を貼ったような感じ。
ぜひ体験してみたい!という方は、分厚くベタベタのガムテープを用意(幅広のものがあれば尚可)。背中を丸めた状態でおなかにしっかりくっつけましょう。すると、あ〜ら不思議、術後類人猿のできあがり。背中を伸ばそうとすると、おなかの皮がちぎれそうなほど引っ張られる感覚を楽しめます。

さかのぼること9日間、手術の翌日のこと。よく世間で言われるように、このあたりにはもう起き上がり、歩き始めます。
歩くことでおなかを動かし、腸が座りのいい位置に落ち着くことで癒着による腸閉塞のリスクを減らしたり、肺の機能を活性化させたり、はたまた傷の治りもよくなるそうで。(ま、わたしは腸閉塞になりましたけど〜)。
とはいえ、術前の説明で「ソッコー歩いてもらいます!」と、にわか、にこやかに語る先生には「ひえ〜、オニ〜!」と思ったものです。

が、しかし実際は、膀胱にカテーテルが入っているおかけでトイレに立つこともなく、まったく完全に24時間横になったままだと逆に早く歩きたい心持ちになるもの。硬膜外麻酔で傷の痛みがほとんどないおかげで気持ちも活発になっているようです。それに看護師さんがそれは優しくサポートしてくれるのでとっても安心。
その日の担当看護師さんは朝、顔を見せると、「今日、ちょっと一緒に歩いてみましょうか」とお誘いするように問いかけてきました。それも、いたずらっぽい笑顔プラス音符マーク付きで……。実にカワイイ。そんな風に誘われたらどこへでも付いてっちゃいます。入院前のイメージは「痛くても歩け、歩くんだ!その方が身体にいいんだぞ!ビシバシ!!」みたいなスパルタ調なものでしたが、現代のステキな看護の世界ではそんなことは微塵もないのです。

しかし、歩くといってもさすがに術後。傷の痛みがなくても身体の動きのぎこちなさは普通ではありません。座るだけでも重労働です。電動で起き上がるベッドの背もたれと共にウィーーンと身体を起こし、足を1本ずつベッドサイドに向かってずらしていきます。そのときはまだ接続されていた点滴やら麻酔ボトルやらをひっかけないように注意しながら、そして大きく付いているであろう腹の傷(このときはまだ見ていない)を気遣いながら、身体を横に向けて足を下ろします。そこでひとまず休憩。そして、看護師さんの手と点滴棒を頼りに、生まれたての子羊のように、はたまた足腰の弱ったおばあちゃんのごとく、ヨロヨロしながら立ち上がるのでした。

それから1歩、2歩と足を進めてみると、おお、意外に歩ける!

スーパースローながらも歩くことができました。意識ははっきりしているだけに、スロー具合は笑えるほど。まさにズリズリと身体を引きずるような歩の進め方。でもどんなにトロくても、つい昨日あんなに大きな手術をしたばかりなのに、痛みなく歩けてしまうなんてすごい、すごすぎる。これをマジックと言わずになんと言おう。医学マジック・アゲイン!

あれれ?でもおなかが伸ばせない?!
がんばって伸ばすと、多分、ソーセージをパキッと折るみたいに皮がちぎれてしまう……。

折れ曲がり角度、約45度。おじぎで言うと、“会釈”の角度。その状態で固定です。おじぎをしているわけではないので、顔は前。点滴棒を握りしめ、医学マジックの感動にニヤリとしながら牛歩する、管だらけの女……。

しかしながら、半ば妖怪のような歩行練習は長くは続かず。病室の入り口あたりまで来たところで気分が悪くなってきて、退却せざるを得なかったのでした。ずっと横になっていたので、頭にうまく血流が行っていなかったようです。

そうして13日目にはすべての管が外されたのですが、おなかは未だつっぱったまま。類人猿スタイルです。徐々に伸ばせるようになってきたものの、胸をはるなんてことはまだまだ先のおはなし。「わたし、本当はこんなんじゃないんですよ!もっと姿勢がピンとしてシャンとしてるんですよ〜〜〜」と、ナースステーションの前を通るときはいつも、心でつぶやくのでした。

ま、看護師さんにとってはそんなことはどうでもいいはなしですが……。
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